胎児から13歳親子を追跡
ミスチルはご存知と思いますが、こちらは「エコチル」。まだ聞きなれないですが、環境という意味のエコロジーと子どものチルドレンをかけた名前です。
胎児の時から13歳になるまで、成長を追跡調査します。その後さらに5年かけて結論を出す壮大な計画で、事実に基づいた証拠の積み重ねこそ重要です。
全国で約300の医療機関が実施します。兵庫県では兵庫医大が中心となって実施します。市民の皆さまの理解と協力をお願いします。
兵庫医科大学長
中西 憲司氏
全国15の研究拠点で10万組対象
エコチルの正式名称は「子どもの健康と環境に関する全国調査」。環境省の企画のもと、全国に15の研究拠点を置き、10万組の親子に協力してもらう予定です。
尼崎では3年かけて6,600組に協力をお願いします。
実施の背景には、子どもの先天性奇形、小児ぜんそく、アレルギーなどが過去25年間で倍近くに増加し、最近では自閉症など精神神経発達障害の増加がみられることも挙げられます。
その原因の一つとしてさまざまな環境の変化が考えられています。例えば、運動や食事などの生活習慣、環境の中の物質、遺伝的な性質などです。わが国は水俣病をはじめ、環境が人間の健康に大きく影響を及ぼすことを知っています。しかし、これら複数の因子がどう関係しているのかは、ほとんど分かっていません。長期にわたり継続して調査することで、解明しよういうのが狙いです。
具体的な調査内容を説明します。対象者は尼崎に在住し、出産予定日が今年の8月1日以降の妊婦さんとその赤ちゃん、お父さまです。妊娠時のお母さんにはアンケートや採血、採尿、出産時にはへその緒の血液採取、お母さんの血液や毛髪の採取などです。生後1ヶ月には母乳や赤ちゃんの毛髪採取、質問表調査。半年後から13歳までは半年ごとに質問票の調査を行います。
参加された方には、アレルギー検査の結果や研究成果、親子の健康管理に役に立つさまざまな情報をお知らせします。また、子育てに関する相談や専門機関への紹介やサポートが受けられます。アンケートなどの手間に関しては薄謝をお渡しします。ぜひ未来の子どもたちのためにご協力ください。
兵庫医科大学
公衆衛生学講座 主任教授
エコチル調査
兵庫ユニットセンター長兼任
島 正之氏
長かった不妊治療。 調査結果に期待
現在2人目を妊娠中で今春出産予定です。8年間の不妊治療を経て、2年前、39歳で長女を出産しました。現在は女優業の割合は減り、育児中心の毎日です。
結婚すれば、子どもは簡単にできると考えていただけに、不妊治療は長くてストレスが多かったですが、頑張っていました。支えてくれたのは主人でした。パソコンで治療方法を調べてくれたり、自ら整体を学び施術してくれたり、協力してくれました。
でも、もう次は高度医療の体外受精に頼るしかないとなった時、経済的にも精神的にもしんどくて、治療の何もかも放り出し、一年間好きなことしました。自分で40歳を治療のゴールと決め、それまでに授からなければ、別の人生を考えようと決めました。
主人とダイビングしたり、旅行したり。そしたら、妊娠していました。不思議です。お産も安産でした。今は毎朝元気に「おはよう」と起きてくる娘の笑顔を見ると「ありがとう」と思います。子どもに高望みは何もありません。
健康で笑顔がいっぱいの時間が少しても多ければ、と願うばかりです。子育てはまさに親育て。仕事は大好きですが、人の手を借りずに両立することは不可能だと実感しています。その時々で、大切なものの優先順位を付けて時間を使うことが大事ですね。
これからは子育て中心ながら、さまざまなジャンルに挑戦していきたいです。エコチル調査には参加できないのが残念ですが、今すぐにでも結果が聞きたいくらいで、楽しみです。私ももっと環境について勉強し、知り合いに調査のことを話したいと思います。
女優
千堂 あきほ氏
島: 子どもの健康と環境との関わりは世界で関心が高く、アメリカや北欧でも調査が行われています。
これらの各国とも協力して調査を行います。それぞれの立場からご意見を。
熊谷: 尼崎で20年、小児科を営んでいます。確かに昔に比べて、ぜんそくやアトピーは増えています。それはなぜなのか、誰も明確に答えられません。
以前、大気汚染に悩まされた時期もありましたが、今は改善され、ぜんそくも重症化は減りました。アレルギーも母親が母乳をやめたり、子どもには特定の食品を絶つような指導をしたこともありましたが、今は違います。栄養の偏りが心配だからです。産婦人科の次は小児科なので、しっかりフォローしていきたいです。
熊谷 直樹氏
渡辺 真理氏
渡辺: 関東から尼崎に夫の転勤で引っ越してきました。尼崎といえば、公害の町というイメージが強く、幼稚園児の長男と生まれたばかりの次男を連れての転居だったので、不安がいっぱいでした。来てみたら、皆さん気さくで、子育てには恵まれていました。バードウオッチングできる自然や川、海もあり、子どもたちと尼崎の魅力を発見しています。 若い母親たちからは子育ての悩みもよく耳にします。最近は、わが子が発達障害では…と心配する母親が多いと感じてます。エコクッキング教室を開くと必ず、食物アレルギーを持つお子さんがいるのも最近の傾向。給食も一緒には食べられず、お母さんも困っています。
二村: 最近は高齢出産が増え、対応が求められています。定期健診の習慣がつき、知識も増え、昔に比べて妊娠中毒症は減りました。今回の調査では不妊治療に関してのアンケートも一部あり、体外受精で生まれた子どもたちの発育状態などの追跡もできます。結果によって、今後の不妊治療にも良い効果が出るのではと期待しています。
島: 調査の対象は尼崎在住の妊婦の皆さんですが、もし、郊外に転出されることがあっても半年に1度の調査票の記入には協力してもらいたいし、継続して13年間協力をお願いしたい。
公害の町といわれながら見事に克服、環境への関心が高い尼崎市を対象に選んで良かったと実感しました。協力してもいいとお考えの方は、ぜひ登録をお願いします。また、参加者以外の方でもこの調査の趣旨に賛同してくださる方はサポーター登録ができます。合わせてお願いします。
二村 和光氏